ディコンタミネーション (Decontamination
) の不徹底と放射能拡散
今回の視察で気づいた最大の問題は、原発方向から間道(?)を抜けて市街地に出てくる原発関係の車の多さです。
我々の移動中の僅かな時間に、白い防塵服を着たまま、中には全員が防護服・防護マスクを付けたまま走行してくる、ライトバンやワゴン車と10台以上すれ違いました。 この台数は我々が異常に気づいてからカウントした数なので、実際にはもっと多いと思います。
これらの車輌は放射能に汚染された地域から、ディコンタミネーション(除染)をしないでそのまま出てきたことは明らかです。 おそらく原発の作業関係者が、避難区域の外にある自宅や寮、または会社の事務所等へ向けて走行していたものと推測されます。
原発の内外で多量の放射能を浴びた車両や人員が除染しないまま、勝手に市街地に出入りするということは、安全だった自宅や会社に不用意に放射能を持ち込み、社員や家族を二次汚染するという大変危険な結果を招いています。特に使用済みの防護服やマスクは、法律上は「放射性廃棄物」なので、外部に持ち出してはならないハズですが、守られていません。
本来は、現場を取り囲むように主要幹線道路上の20km程度離れた安全な場所に、検問施設とディコンタミネーション施設を数箇所程度設営し車輌や機材の除染と、使い捨て防護服・マスク類を回収し、汚染物質の持ち出しや拡散を防止しなければなりません。
Jビレッジ以外にディコンタミネーション施設が在るのか否か分りませんが、現実にディコンしないまま市街地まで至る車輌が少なからずあることは、深刻な問題です。 至急、原発施設に従事・出入りする者全員に、デコンタミネーションの必要性や放射能拡散防止に関する教育を徹底的に実施し、汚染拡大防止のルールを確立すべきだと感じられた。
使い捨て型防護服の問題点
現在福島原発の事故現場で使われている防護服は、アスベストや鉛、ダイオキシンの除去作業に使用されるドライエリア用の不織布製使い捨てタイプが主流です。
この不織布製の防護服には、小雨程度をカバーする撥水性はありますが、本格的な耐水性は有りません。 大雨や長時間の降雨及び大量の水が掛かる場所や水中では、水に溶けた放射性物質が、防護服を通り抜け装着者の皮膚にまで浸透する危険が避けられません。
そのため、水シャワーを使用する一般的なディコンタミネーションは実施できません。
やむを得ず、ディコンタミネーションゾーンでは、自分や他人の防護服などに付着した放射能を、呼吸と共に吸い込まないよう、用心しながら防護服を脱ぎ、廃棄容器に投入後は速やかに安全エリアへ移動することになります。
また、不織布製の防護服には、補強のためにポリエチレン系のコーティングが施してあるため通気性がきわめて低く、体から発する熱や蒸気の発散が殆どできないので、 梅雨や夏のシーズンには、熱中症・熱射病の危険が高まることにも注意が必要です。
「放射能防護服」と「放射線防護服」
原発事故で使用する防護服には、放射能(放射線を発する物質)から作業員を防護するための「放射能防護服」と、放射能から発する放射線を遮蔽する効果のある「放射線防護服」のニ種類があります。
「放射能防護服」は、放射能が直接皮膚に付かないようにする防護服と手袋・ブーツ、及び呼吸時に放射能を吸い込むことで引き起こす「体内被曝」を防ぐための「Hepaフィルター」フェイスマスクで構成されております。 「放射線防護服」は、放射能防護服に放射線遮断効果の高い素材を併用しているのが特徴です。 それぞれ使い捨てではなく、除染・クリーニングのうえ、繰り返し使用されるのが一般的です。
通常は、汚染地域から引き上げ後、ディコンタミネーション施設で除染(一般的には水シャワー)し、さらに放射線計測機で残留放射能の確認をした後で防護服を、次にマスクを脱ぎ、非制限(安全)区域へ移動するのが一般的な使い方です。
警察の検問体制と装備
警察による検問は災害地の治安維持や犯罪予防に大いに役立っています。 また最近は、一部の識者から、傷ついた原発施設は絶好のテロの標的にされる恐れがあるので、警戒をさらに強めるように求めるコメントも出されており、警備の重要性は高まる一方です。
しかし、放射能の拡散防止や汚染の封じ込めという点では、現状では十分に機能していない面もあります。 制限区域に入場しようとするのはもちろん、制限区域から出ようとする人や車も規制する必要があります。 そのためには主要な間道にも検問所を設けるか、それが無理なら物理的に封鎖して、汚染車輌や人員・機材が、除染をせずに間道を抜けて市街地と直接往来することは取り締まるべきです。 「すべての制限区域への出入りは、ディコンに絞り込む」よう、警察の検問体制の見直しが必要ではないかと思われます。
警察官の装備について
5月4日、現地周辺を移動中に何回か警察の検問所に出会いましたが、いずれの検問所でも警察官は特別な防護服やマスク等は着用しておらず、一部の方が風邪か花粉症用のマスクを装着している程度でした。 車輌も普通のワゴン車と警備用の大型バスで、こちらもHEPAフィルター・陽圧システムやインターロックドアなどは付いていない通常型の車輌のようでした。
原発周辺の検問所では、おおよそ「10〜20μsv/h程度」の線量が感知されましたが、114号線の検問所の東5〜6km先の地点では、50μsv/hをオーバーする線量を検知しています。 「直ちに健康に害を及ぼ線量ではない」かもしれませんが、今後相当な長期戦が予想されるうえ、メルトダウンやメルトスルーと発表されているように、事態が急変し何時何が起きるのか予断を許さない状況ですので、防護服や空気清浄機つきの車輌、シェルター機能のある待機所施設の必要性を痛感した次第です。