紛争地域から、RPG-7ロケット弾による被害が多く報告されています。RPGは、英語で「Rocket Propelled Grenade」(ロケット推進式榴弾)」と訳されておりますが、正式にはロシア語で「Ruchnoy Protivotankoviy Granatomet」(携帯式対戦車榴弾発射器)と言うようです。 原理は、モンロー効果を用いた成形炸薬弾(Shaped Charge)で、対戦車用のHEAT弾(High Explosive Anti Tank)の一種です。

この携行式対戦車ロケット弾、RPG-7は大変安価で使いやすく、そして強力な破壊力を持っており、装甲車両はもちろん世界最強の戦車といわれる米軍のエイブラム戦車すら当たり所(エンジンルーム等)によっては撃破されると言われる驚異的な高性能兵器です。

また 2001年(平成13年)12月22日に発生した北朝鮮の工作船事件では、海上保安庁の巡視船(あまみ)が、北朝鮮工作船からAK-74自動小銃14.5mm2連装機関銃、更に2発のRPG-7ロケット弾による攻撃を受け、海上保安官が負傷しました。 荒天が味方したのか幸いにもロケット弾は2発とも命中せず大きな被害は回避されましたが、わが国へ不法侵入しようとするスパイ船がRPG-7を装備していたということは、既に日本国内へ持ち込まれている可能性を示唆しています。

さて上記の写真(wikipedia 引用)の上の部分が、RPG-7発射装置( ロケットランチャー)で内部は中空の筒になっています。 下がロケット弾です。 写真では分りにくいですが、ロケット弾は3つの部分で構成されております。

写真左の膨らんだ部分が弾頭で、内部に逆円錐(ロート)状に高性能爆薬が充填されており、発射後に硬いものに当たると、弾頭の圧電信管が作動し爆薬を後部から起爆させ、メタルジェットとなって爆発エネルギーを一点に集中して前方へ噴出します。 メタルジェット(モンロー/ノイマン効果)は、300mm程度の鋼鉄製装甲板を瞬時に貫通し、高温高圧ガスを車内に吹き込み装甲車等を破壊する仕組みとなっています。 中央部が、ロケットブースターで内部にはロケット推進火薬と、折りたたまれた4枚のアルミニュウム製らしい羽 Fin が入っています。 右端部 (この部分は左の本体とは別物で使用時にねじ込んで一体化します)は、無反動砲弾としての発射装 薬が充填さ れています。

RPG-7を発射するときは、この弾頭をランチャーに前から差込み、所定(発射用起爆信管と撃針・ハンマー)の位置に合わせてセットします。 引き金を引くと、後端の無反動弾装薬が爆発し、轟音と盛大なバックブラストを後方に放つことで弾頭を撃ち出します。 その後約30メートルほど飛翔し、やや高度が落ちたあたりでロケットブースターに点火して4枚の Fin が開くと共に再加速、照準点へ突き進みます。 発射の模様を横から観察すると、発射直後に前方30メートルあたりでロケットブースターに点火した際の小爆発が観察されます。   

RPG-7は、無反動砲とロケット弾を組み合わせた撃ち放しのロケット弾で、弾道をコントロールする機能は無いのでミサイルではありません。 またバズーカ砲と誤った表現をされることがあ りますが、バズーカは、単なるロケット弾とその発射装置であるのに対し、RPG-7は無反動砲とロケット弾を組み合わせた、ハイブリッド方式のユニークな兵器です。 威力の割りに安価で、取り扱いに特別な訓練は不要で、小型で持ち運び、隠匿、保管も容易なため今後も普及拡散は避けられません。 

さて小型で強力な破壊力を持つRPG-7ロケット弾ですが、弱点も多々あります。 まず、実際に実射試験を行って分ったことは、ロケット弾の破壊力は、単に成型炸薬のメタルジェットによるものだけではなく、もう一つの要素として弾頭の衝突スピードによる物理的な作用が大きく影響していることが挙げられます。 ロケット弾は、ブースターにより弾丸を加速(秒速250m程度・・・コルト45拳銃の弾速と同程度)してやらないとメタルジェットの効果が十分発揮されないようです。 そのため一般的には80メートル以上の距離から撃つこととされています。 各種のRPG-7ロケット弾の防護システムが開発されておりますが、試験リポートによると実射試験では無く、標的とRPG弾頭を固定して行う"静爆試験"ばかりのように見受けられます。この静爆試験では本当のRPG-7の威力を発揮できません。静爆試験に合格しても、戦場では役に立たない恐れがあります。 余談ですが、標的までの距離が近すぎると不発(信管が起爆しない)になると試験現場で兵士が話してくれました。 (・・危険すぎて実験はしておりません)  

では80メートル以上離れて、走行中の装甲車等に命中させられるかというと、射手の技量にもよりますが、かなり難しい確率となります。 弊社の試験では1メートル四方の固定標的に、80メートルの距離から肩撃ちでトライしましたが、初弾は枠の部分に当ててしまい失敗しました。 次弾以降は即席の架台を使ってやっと正確に当てられました。      このレベルの命中精度なので高速で走行する車両に、80メートル横から命中させることは至難の業です。したがって車両を攻撃する場合、待ち伏せや障害物等を使って、車を停止または低速走行に追い込んでから攻撃します。 また戦車や装甲車に対しては、道路周辺に身を隠し通過を待って、真後ろ(走行中の車両は真後ろから照準すると、遠ざかるだけで動かない。 また後ろ向きには武装していないので撃たれる心配が無い)から撃つことで容易に命中します。 重装甲の戦車といえども、歩兵や武装車両の支援無しで単独行動をすると、もっとも脆弱な後部エンジンルームにRPG-7を撃ちこまれることになります。

命中を阻害するもうひとつの要因として、弾頭中央部のロケットブースター部に、弾道を安定させるための4枚の羽根がついておりますが、この羽根が風の影響を受けやすく、横風で弾頭が風上に流れて命中しないという欠陥があります。 さらに無反動砲の発射に伴うバックブラストが発生するため、車内や狭い室内からは発射できません。 また盛大なバックブラストにより発砲場所が暴露されるため、発射と同時に射手は集中砲火を受ける等の弱点・問題点があります。

現在このRPG-7から装甲車の乗員を守るためには、二つの方法があります。
一つ目は、リアクティブアーマーシステム (爆発反応装甲)と呼ばれる爆薬を使用したシステムです。 装甲車(あくまで装甲車、ソフトスキン車には不可)の装甲面に、爆薬を充填したBOX(リアクティブアーマー)を取り付け、RPG-7に被弾した際にこれが瞬時に爆発し、メタルジェットの直進を妨害して車体を防御します。
二つ目は、米軍のストライカー装甲車で有名になった、ケージ式のスタンドオフ型防護システムがあります。 このケージ方式は、装甲鋼板ではなく、視界確保と重量軽減のために、鉄格子を鳥かご状に張り巡らし、RPG-7をスタンドオフ(装甲の手前で爆発)させることで、メタルジェットの威力を軽減し装甲を守るシステムです。 当然ですが鳥かごだけでは強烈なメタルジェットを防ぐことはできません。 通常装甲板の外側に特殊な追加装甲板が取り付けられております。


<RPG-7対策ケージ(スラット装甲)を装着した米軍のストライカー装甲車



<リアクティブアーマーを取り付けた米軍のM1A3ブラッドレー歩兵戦闘車(IFV: Infantry Fighting Vehicle )>