▲まず空撃ちの練習からスタート。

1日目 AM9:00 射撃レンジにて

レンジに移動。「初級ハンドガン護身用コース」はレンジで訓練が始まった。
まず、レンジマスター(1名)の紹介と各トレーナー(5名)の紹介、引き続き約40名を2班に分け20名づつファイヤリングラインに並ぶ。
ファイヤリングライン(射線)に入った時以外は、ホルスターから銃を抜いてはならない。射線上において銃を抜いた場合、標的の方向以外に銃口を向けてはならない等々射撃レンジの安全行動について再び注意事項の指示を受ける。とその時「ズドドドド」と大人数で一斉射撃したサブマシンガンの連続発射音がレンジに響き渡った。サブマシンガンコースはもう撃ち始めたようだ。


ドライファイヤドリル(空撃ちによる訓練)

スタンディング(立ち方)
(1)的に対し30°の角度で立つ
(2)軽い前傾姿勢をとる。決して棒立ちしたり、のけぞってはならない。

銃の握り方
右利きの場合、右手でグリップに指を巻き付けるようにして軽く握り、人差し指はまっすぐ伸ばしスライド側へ。左手は右手を包むように4本の指を右手の4本の指に重ね、左手親指は右手の親指をグリップの上から下へ押さえ込むように重ねる。(注)発射する時以外は右手の人差し指は伸ばしてトリガーの上あたりに止めておく。

リコイルコントロール
リコイル(反動)は銃の宿命であるが右手は突き出すように、左手は右手を手前へ引き付けるように相互に力を打ち消すような持ち方でリコイルとマズルジャンプ(発射時の銃口の跳ね上がり)を両手で吸収する。

拳銃射撃一連の動作
(1)発射の5段階
1.右手でホルスターの中の銃のグリップを押さえると同時に左手手の平を腹部(ヘソの上あたり)に当てる。
2.右手でホルスターから銃を真っすぐ上へ約20cm程度の位置まで引き抜く。
3.90°手首を返して銃口を前方へ向ける。
4.銃を前方へ出しながら左手を巻き付け、照準する。
5.引き金に指を入れ撃つ。
(2)発射後
1.引き金の人差し指を抜き銃をチェックの位置へ戻す。
2.素早く左右・前後を確認。
3.ゆっくりと銃口を向けながら再度左右を確認。
4.リボルバーとグロックはそのまま、他のディコックできる銃はディコックまたはセフティをかける。
5.右手で銃を(1)の3の位置へ戻し左手は腹に当てる。
6.90°手首を返して銃口を下のホルスターの方向に向ける。
7.ゆっくりと確実にホルスターへ格納する。

照準
的と銃身の先端にある照星と後端にある照門の中央が一直線になるようにして照準する。コツは、人間の目は焦点が1ヶ所しか作れないので照星に焦点を合わせて照準することがポイント。

トリガーコントロール
正確な射撃には正確な照準の他に、緻密で正確なトリガーコントロールが必要であり、トリガーコントロールの上手・下手が命中に大きく影響を与える。また、銃によってトリガーの重さやストロークに違いがあるので、愛用銃のトリガーの癖を自分の体に覚えこませることが必要。カラ撃ちしながらトリガーの遊びストロークとハンマーが落ちるタイミングを体で覚えよとのことで空鉄砲を撃つ。ドライファイヤー(空撃ち)ドリルが各班わずか15分で終了し、いきなりマガジンに実弾装てんの号令が出る。FEDERALの50発入りの箱を開けてマガジンに押し込んでいく。レンタルガンのマガジンは10発用である。マガジンは4発目まではスムースに入るが、5・6発目からは指先に相当な力を入れないと入らない。素手で爪を傷めずにロードできるのはかろうじて8発までで残りの9・10発目はクイックチャージャーという小道具のお世話にならなければならなかった。15発マガジンの場合、この小道具なしでは満タンにできないのではないかと思われる。


実戦射撃訓練の開始

第一班約20名が射線(3m)に立つ。この時、自分の足を撃たないよう注意があった。開業以来事故が2件発生しているが、いずれも自分で自分の足を撃ってしまったとのこと。その他銃口を覗くな、物を落としても拾うな、射撃以外の動作は厳禁という最終注意事項の指示を受けた。いよいよ実弾の発射である。やや緊張している。他のレンジから一斉射撃の轟音が響いてくる。

第1段階ファイヤードリル
1.「チェンバーチェック、マガジンチェック」でグロックのチェンバーが空であることとマガジンが銃に入っていないことをチェック。オートマチックGunの場合、右手に銃を持ち左手は下から親指と人差し指、中指でスライドの前端をつかみ、ハンマーがコックしない程度のストロークで後退させチェンバー(薬室)を覗き装てんの有無を確認する。

2.「リロード」の号令で銃を標的に向けたまま、マガジンを取り出し、左手の人差し指の先で弾丸を確認しながらグロックにブチ込み、スライドを勢いよく引っ張って離してやる。ガシャコンと初弾が装てんされる。引き金を引けばいつでも弾は飛び出す状態だ。


▲マガジンに弾丸を込める。6発目以降は非常に力が必要で最後の9~10発目は素手では入らない。


3.「アンロード」の号令
銃を標的に向けたまま、マガジンをリリースし左手で受けポーチへ納める。エジェクトポートに左手をかぶせ、銃を反転しエジェクトポートを下にして、スライドさせチェンバーの弾丸を抜く。抜いた9ミリパラの弾丸はズボンのポケットへ。

4.再び「リロード」と「アンロード」の操作を反復し頭ではなく体で覚える。

5.「リロード」そして「ディコック」、「インザホルスター」の号令。チェンバーに装てんしたGunをホルスターに納める。リボルバーとグロックはこの状態では引き金を引かない限り弾丸が発射できない構造なのでそのまま何もしないでホルスターへ。他のオートマチックガンはディコックでハンマーをレストさせるか、セフティをかけてホルスターへ納める…。いよいよ発射の前段階だ。

6.「レンジクリヤー」「ファイヤードリル」の号令
軍人出身と思われる見事な大声、キレと張りのあるレンジマスターの号令だ。4~5人に1人づつトレーナーが付き後ろから監視される中「撃ち方始め」。20人が一斉射撃するのだから大変な迫力である。小生の場合、英語力不足の為通訳を通してワンテンポ遅れて動作することになり、思うように集中できない、ああもっと英語を勉強してればとよかったと反省しつつ発射。「当たらない」「何故だ」「こんなハズじゃない」いつもは、5mで200㎜角や300㎜角のテストピースに三角形・四角形にと自在に撃ち込んでいるのに、こんなに近い(3m)の的の中央に弾丸が寄らない。1マガジン10発撃ったところで、「アンロード」「エンプティガン インザホルスター」の号令。マガジンを抜きチェンバーを空にして銃をホルスターに納めると「ターンアンドチェック」の号令。回れ右をすると教官がチェックして、訓練終了。その後標的のところに戻り弾痕の穴にテープで目張り。その際教官より、弾痕は横方向のブレは少なく上下に散っているのでトリガーコントロールが不良と指摘された。確かにグロックは初体験で、あの2重トリガーのコントロールが上手くできていない。右の人差し指の中央でトリガーを引くことと、遊びのストロークをコントロールするよう指導を受けた。第2班と交替。休憩しつつマガジンに弾丸込め。射線以外の場所で銃を抜くことは厳禁されているので、空撃ちの練習はできない。頭の中でイメージトレーニングを繰り返す。

第2段階(コンビネーションショット)
2度目のファイヤドリル(実弾発射訓練)から同スクール独自のプログラムで2ヶ所3発射撃のトレーニングに切り替わった。アメリカでは警察官はもちろん、犯罪者も防弾ベストを着用して犯行に及ぶケースが多く命中弾を与えても防弾ベストのおかげで反撃を受けることがある。それらの状況をふまえて、同スクールの射撃は独特のマンターゲットを使ったトレーニングを行っている。
最初に胸部(一般的な標的と同様胴体上部中央、心臓の位置)に2発、更に顔面(両眼から鼻の下の位置までの小さな四角のゾーン)に更に1発。2ヶ所に3発撃つ「コンビネーションショット」が基本的な撃ち方である。特に詳しい説明は無かったと思うが、このスクールのこの射撃方法では、銃を撃つということはすなわち相手を殺すということと同義語であると理解した。



1日目 午後 学科(13:00~15:00)


▲自ら学科を直接指導するオーナーのイグナシアス・ピアッザ氏

1.銃を使う場合の2つのリスク
その1つは、刑法上の問題でいわゆる正当防衛が成立するか否か、成立しないと犯罪者となり刑務所行きとなるリスク。
その2は民法上の問題で正当防衛が成立しても相手が亡くなったり、障害を負わせてしまった場合に莫大な補償金の請求を受け、結果的に自分の財産や社会的地位、将来、仕事や商売、家族まで失うリスクである。

2.銃を持つ物の心構え
「銃に頼るな、銃は最終最後の手段である」「銃はできる限り使うな、しかし使うと決めたら迷うことなく確実に撃て」がスクールの基本方針である。銃社会のアメリカでは、威嚇射撃や手足を狙い撃ちする等の中途半端な対応は直ちに自分の死に直結する行為となる。また下手な射撃で相手が生存していた場合、裁判所で陪審員相手に正当防衛を主張しなければならないが、正当防衛が認められる可能性は決して高くはない。また相手が成功報酬の弁護士を雇った場合は、長期間の法廷闘争や高額な医療費の負担また社会的に立ち直れなくなるほどの賠償金の支払いが待っている。従って最終的に銃を使うことを決めた瞬間から、心を鬼にして相手が死ぬことを前提に情け容赦無く撃つことが正しい判断なのである。コンビネーションショットは賛否両論あると思うが、現実のアメリカ社会の犯罪者に対しては、理にかなった射撃である。納得。

3.正当防衛について
アメリカにおいて正当防衛とは、法律上の規定とは別に、相手の弁護士の能力と裁判における陪審員の判断及び裁判官個々の判断によって大きく変化することを覚悟しなければならない。特に銃の所持許可証を持っている人や当スクールのようなところで射撃技能を習得している者は多くはガンマニア、ガンマン(撃ちたがり屋)の先入観を持たれ裁判では不利になる場合もある。

正当防衛のケーススタディ(例)
休日の午後外出から自宅に戻ったところ、見慣れぬバンが停まっていたので用心して離れて見ていると自宅のステレオやパソコンを盗んでバンに積んでいるのが分かった。車のBOXから拳銃を取り出し近づいてドロボーに止めるよう警告したところ、相手が隠し持っていたピストルをこちらに向けて1発撃ってきたので応戦してドロボーに撃ち返したところ2発命中した。付近の住民が通報したのでやがて救急車とパトカーが到着した。3日後に犯人は銃弾が原因で死亡した。このケースは裁判で正当防衛が成立したか、答えはNO。
陪審員の判断はドロボーの現場を見た段階で警察に通報すべきで、銃を持って近づき警告を発する行為自体が相手の銃撃を引き起こす原因となっている。最初に撃ったのがドロボーでこれに応戦したからといって正当防衛ではないと判断され有罪となったそうだ。

第3段階ラピッドリィファイヤー(rapidly fire)・(速射)15:30~   
初日の午後は天気が悪くなってきた。雲と晴れの短いサイクルの繰り返しで時々小雨が降ってくる。日が照れば暑く、曇ると肌寒く小雨が降ると結構冷たくなる。おまけに風も出てきた。それでも全然関係なくレンジマスターの大声が響く。「チェンバーチェック」「リロード」「チェンバーチェック」「インザホルスター」一連の号令に体が合ってき始めた。わずか1日で昔からやっているような安定した動作ができるようになってきた。これからは早く撃つ事に重点を置いた訓練に移行するとのこと。レンジマスターが10mのラインから素早く銃を抜いて2ヶ所3発の見事なコンビネーションショットの手本を見せてくれた。
素晴しい射撃だ。全弾黒的の中心にヒット。しかもホルスターから抜いて3発撃った時間の短いこと、1~2秒か。皆感動の余り一瞬声を失い静かになった。がその後40人が一斉に拍手やワーワーギャーギャー奇声をあげてレンジマスターの腕前を褒め称えた。こんなレンジマスターと撃ち合ったら確実に数秒で天国まで送り届けてくれるだろう。苦しまなくて済むので感謝されるかも、等と思いつつラピッドファイヤー(速射)の訓練開始。

※ラピッドファイヤー(速射)の重要性について
過去の犯罪の統計によると、犯罪者の多くは素早い運動能力を持つ者が多く、約2秒間で8m程度の距離を移動することができるそうだ。従って、8mの距離で犯罪者に遭遇した場合、2秒以内に射撃しないと自分の銃を奪われたり、刃物を持っていた場合は自分が刺されることとなる。最終的には当スクールの方針として10mの距離で1.5秒以内に命中させる技能を身につけてもらうことが目標とのこと。

※当たらない
ゆっくり撃っていた時はそこそこ命中していたが速射訓練になったとたんに当たらなくなってきた。正確に云うと再び上下にバラついている。教官によるとトリガーを引く指(右の人差し指)の発射後の戻し過ぎが原因とのこと。

17:00 レンジ終了。ホールにて学科
銃を使った後のルール
1.銃を抜いたら撃たずに済んだとしても、必ず警察を呼ぶことが原則。この原則を守り続けることで、将来正当防衛を立証する場合に正しく銃を使い、ルールを守っている市民ということが検事や陪審員に理解してもらえる。
2.銃を撃ったら相手(主に犯人)を倒してハイになってはいけない。まず反撃を受けない用心をすると共に脈の有無に係わらず救急車を最優先で呼び、相手の介護に努めること。
3.警察官に対して警察官が到着したら絶対に逃げたり、反抗したりまたはそのように誤解されそうな行動をとらないこと。到着したばかりの警察官は緊張の頂点にあり不用意な行動や刺激で誤射されてしまう場合もあるので落ち着いて冷静に対応すること。
4.銃撃直後の現場では誰が加害者か被疑者か警察官も状況把握できていないのでとりあえず身柄の拘束となり手錠をかけられ、パトカーか護送車に放り込まれ、警察署の留置場に入れられる。ここまでは絶対服従すること。抗議や抵抗すると公務執行妨害罪を追加され反社会性有りとして裁判で極めて不利になる。

▲上手な逮捕のされかたの寸劇。左が教官、右が現役警官
▲右がコネチカットから来た現役パトロールオフィサーのジョンさん。彼は訓練中防弾ベストを着用していた。左は筆者。(現役警察官につき顔をかくしてあります)

※現役ポリスオフィサーと教官の実演
この講義の際、教官が誰か警官はいるかと質問したところ5~6人が挙手。コネチカットから来たというパトロールオフィサーが指名され、教官を被疑者に見立てて銃を向けた警官との寸劇が始まる。
「動くな」「銃を床に置け」「ゆっくり」「置いたら両手の平を見せろ」「両手を頭の後ろへ回せ」「ゆっくり後ろへ下がれ」「後ろを向け」「ヒザを付け」簡単なボディチェック、「ゆっくりうつ伏せに寝ろ」ヒザで背中を押さえる、右手にピストル左手に手錠、「相手に、右手を背中に回せ…手錠をかける」「左手を背中に回せ…手錠をかける」といった流れで現役オフィサーと教官による上手な逮捕のされかたの実演であった。このコネチカットから来た若いオフィサーに後刻取材したところ、自分自身が射撃のスキルアップの必要性を感じて本人の希望で「FSFATI」に来た。帰ったらここで習ったことを署の全員に教育することを条件に費用の半分を署が負担してくれた。訓練内容について大変実践的でとても満足しているとのこと。
尚、このオフィサーは学科の時もシャツの下に防弾ベストを着用していたので尋ねたところ「着用するのが当然で訓練中は特に必要だ」と笑って答えてくれた。同感。

18:30 本日の訓練全て終了。
砂漠の夜は寒い。なお上級コースは夕食後夜間訓練とのこと、暗い屋外で銃の操法と射撃を行う非常に実践的トレーニングだ。ご苦労様です。

  


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